ちょっと話があるんだけど。

 

お盆にチラリと実家に寄った時。

いきなり母親に、

「ちょっと話があるんだけど」と言われました。

顔が作り笑いに見え。

「お父さん、お父さん、konpekiが来たよ!」

家の奥に向かって大きな声で、母が父を呼びかける。

胸がザワつく。

何?病気か何かの告白?!

また白髪が増え年老いた父が、少し元気の無い表情で言う。

「ここに、座りなさい。話したいことがある」

ヒェー。これはただ事じゃないな。

「何かあったの?」

 

「・・・・・・」

 

 

 

目の前で、父と母が重い口を開く。

「自分たちのお墓をたてようと思う」

「もういい歳だからね。いつ何があるかわからないから」

手元にはお墓のパンフレットなど。

すでに墓地をたてる場所なども決まりつつあるそうで。

二人の話は続く。

今後の未来について。後のことについて。

 

若くても、歳を経ていても。関係なく。

いつ、何が起こるかわからないけど。

死を迎える時がいつかなんて、神のみぞ知ることなんだろうけれど。

まだ元気に生きている時に、目の前の大切な人が、

死んだ後のことを口にして、

話を聞くのは、耳を右から左へ通り過ぎそうで。

背中をかいてもかいても、痒い。

手が届かなくて歯がゆいような。そんな感覚。

死を迎える覚悟なんて、したくない。

胸の中が、ひんやり冷めていく。

 

「二人が好きなようにしたらいいよ」

そう答えた。

二人が幸せだと思う選択ができたらいい。

二人が、ずっと元気に生きていたら、なによりも、いい。

 

寿命って、不思議。

一人一人、違って。

死は、遠いのか、身近なものなのか、短いのか。

やはり、今、ここで生きていることは、奇跡なんだ。

父と母から生まれたことも奇跡。

二人の愛があり、一人で生まれ、

いつか一人で、この世から消えていく。

想像ができない未来が、私は、いつも怖い。

恐れても仕方無いのだけれど、

言葉には魂が宿ると言うけれど、

私の心のうちは、天秤のよう。

不安と希望たちが重石となり、

右に、左に、上がったり、下がったり、

繰り返している。